――――憂い――――



ここのところあの子は元気がない。
自惚れかもしれないがおそらく原因の多くは自分なのだろう。
見ていればなんとなくわかる。
やはり受験となると勉強に忙しくなって、ちょくちょく薔薇の館に顔を出していた私でさえ、最近ではたまにふらりと立ち寄る程度。
そういったことが卒業というものを意識させるのだろうか。
あの子は寂しいんだろう。
薔薇の館に来ても、今までの何気ないあたりまえな日々がもうそこにはないことが。
もちろん私だって寂しくないわけはない。
でも私はあの時、あの冬のつらい別れ以来お姉様や蓉子、それに山百合会のみんなのおかげで強くなれた、人間的に一回り成長出来たとそう自分で思えるから。
それに受験生となった私には、受験勉強というやらなければならないことがあるのだ。
感傷に浸ってばかりもいられない。


最近私は、ふと気がつくとあの子のことを考えている。
今だってそうだ。勉強に集中しなければならないというのに…。


日々それぞれが忙しくなり、顔を合わせないことが普通になっていく。
こんな日々が、そしていずれ別れの時が来るのなら、いっそ出会わなければ、姉妹になどならなければ良かった。
あの子はそんな風に考えるのだろうか。昔の私のように。
だとしたら、いや、そうでなくとも伝えたい。
あなたに会えて本当に良かったと。
そして笑顔にしてあげたい。
憂えた顔も魅力的だけれど、でも笑ってる方がずっとずっとかわいいから。

今どうしているだろう……


志摩子――――――――――